相続税申告の基本-相続税の計算方法や申告の期限とは-

税理士 清水 克彦 (しみず かつひこ)

財産を所有している人が亡くなると、相続が開始されます。

相続が開始されると、財産の確定や分割協議など多くのことを行う必要がありますが、相続税の申告や納税もその1つです。

しかし、ほとんどの人にとって、相続は一生の内で数えるほどしか経験しないため、相続税の申告といってもピンとこないでしょう。

そこで、今回は相続税申告の基礎を解説します。

相続税申告の流れ

相続税の申告をするためには、財産の確定をするなど、事前に様々なことを行う必要があります。

そこで、まずは大まかな相続税申告の流れについてみていきましょう。

相続と相続税とは

相続とは、死亡した人(被相続人)の財産・債務に関する権利・義務などを、親族など被相続人と一定の身分関係の人(相続人)に引き継ぐことをいいます。

遺言書があれば、原則その記載通りに財産を引き継ぐことができますが、遺言書がない場合は相続人で協議をし、財産を分割します。

相続税とは、被相続人の財産を相続人が引き継いだ場合に、その引き継いだ財産の金額に応じて課される税金のことです。

相続税の納税が生じる場合、もしくは納税がなくても小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用を受ける場合は、国に相続税の申告を行う必要があります。

相続開始から相続税申告までの流れ

相続開始から相続税申告までの大まかな流れは、次のとおりです。

①相続の開始
被相続人の死亡により、相続が開始されます。

②遺言書の有無の確認
上述したとおり、相続では、遺言書があれば原則、その記載通りに財産を引き継ぐことになります。

そこで、まず遺言書の有無を確認します。

③相続人の確定
遺言書の有無を確認したのち、次に戸籍謄本等を調査し、相続人が誰かを確定します。

ここで、初めてその存在がわかる相続人が出てくるケースもあります。

④相続財産の確定と評価
相続人の確定と同時に行うのが、被相続人が所有していた財産の確定です。

通帳の流れや郵便物などから現金や銀行口座、株式、不動産などの財産を確定していきます。

株式や不動産などの財産を所有している場合は、その価値の評価も行います。

⑤遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
遺言書がない場合は、相続人全員で財産をどのように分割するのか協議する必要があります(遺産分割協議)。

相続人全員の同意が得られたら、遺産分割協議書を作成します。

⑥相続税の申告と納付
遺産分割が決まれば、国に相続税の申告を行い、納税をします。

相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続税の計算方法

相続税の正確な納税額を求める計算方法は複雑ですが、納税の目安となるおおまかな相続税の計算であれば難しくありません。

ここでは、おおまかな相続税の計算式をみていきましょう。

相続財産が基礎控除以下なら相続税はかからない

相続により財産を引き継いだ場合、必ずしも相続税の納税が発生するわけではありません。

それは、相続税の計算には「基礎控除」があるからです。

基礎控除とは、どの相続でも必ずある基本的な控除のことです。

引き継いだ財産(相続財産)の価値から基礎控除額を差し引いたものが、相続税の対象となります。

そのため、相続財産が基礎控除額以下の場合は、相続税はかかりませんし、そもそも相続税の申告義務もありません。

基礎控除額は、次の計算式で計算します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば:
相続人が配偶者と子供2人の合計3人の場合の基礎控除額
→3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

相続税のおおまかな計算方法

相続税の金額は、課税遺産総額(相続財産の合計額-基礎控除額)を、各相続人が法定相続割合で取得したものと仮定し、各相続人の法定相続分に対して速算表を使用して相続税の総額を計算します。
そして、その相続税の総額を、各相続人が実際に相続した割合で負担(納税)します。

例)相続財産の合計額が1億円、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合

課税遺産総額=1億円―4800万円=5200万円
配偶者の法定相続分:2分の1  →2600万円
子の法定相続分  :各4分の1 →1300万円ずつ

速算表によると、
配偶者 2600万円×税率15%-控除額50万円=340万円
子ども 1300万円×税率15%-控除額50万円=145万円ずつ
→相続税の総額 340万円+145万円+145万円=630万円

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

平成26年12月31日以前の相続税については、上記の速算表とは異なります。

相続税の対象となる財産とは

相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合は相続税がかかります。

しかし、被相続人から引き継いだ財産のすべてが、相続税の対象になるわけではありません。

財産の中には、相続税の対象になるものとならないものがあります。

それぞれの代表的なものは以下の通りです。

相続税の対象となる財産

財産の種類 内容
土地 宅地、農地、山林、雑種地など
家屋 家屋、構築物(未登記のものを含む)
有価証券 株式、出資、公社債、投資信託など
現金・預金 現金、普通預金、当座預金、定期預金、定期積金など
家庭用財産 家具、什器備品、骨董品、宝石など
その他の財産 車両、貸付金、ゴルフ会員権など
事業用財産 商品、製品、事業用車両、機械装置、売掛金、貸付金など
会社経営者の財産 自社株式など
生命保険等 死亡保険金など(一部非課税)

相続税の対象とならない財産

相続税の対象とならない財産とは、国民感情や社会政策などの理由から、相続税を課すことが適当でないとされるような財産のことです。

具体的には、次のようなものです。

  • 墓所、墓地、墓石、仏壇、仏具など
  • 宗教、慈善、学術などの公益を目的とした事業を行う一定の個人が取得し、その公益目的事業で使うことが確実な財産
  • 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
  • 生命保険金や退職手当金の内、一定の金額
  • 相続税の申告期限までに、国や地方自治体などに寄附した相続財産

相続税の申告で不明点があったら専門家に相談を

今回は、相続税申告の基礎についてみてきました。

相続税の申告までには、相続人や財産の確定をしたり、遺産分割をしたりと、多くのことを行う必要があります。

また、相続税の計算や申告書の作成、そもそも相続税の対象となる財産かどうかの判断など、複雑なことも多いです。

ご自身のみで相続税の申告をするのは難しいため、相続税の申告で不明点があれば、速やかに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、経験豊富な税理士、弁護士、司法書士がワンストップであなたを全力でサポートします。

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