相続登記を専門家に依頼する必要性とは

司法書士 宮尾 優 (みやお ゆう)

相続が発生した際には、保険金の請求、相続税の申告や遺産の名義変更等、様々な手続きが必要となります。

遺産の名義変更としては、車や株式の名義変更、預貯金の解約や不動産の相続登記などが挙げられます。

この相続登記は、以前は司法書士等に依頼するのが一般的でしたが、現在はご自分で手続しようとする相続人が増えています。

しかし、相続登記は、欠けることなく書類を収拾することや記載ミスなく書類を作成することが意外に難しい手続です。

今回は「相続登記の手続を専門家に依頼した方がいい」理由について、お話しします。

不動産の相続登記手続きの現状

従来は、車や株式の名義変更、預貯金の解約については相続人自身の方で済ませる方が多い一方で、専門性のある不動産の相続登記の手続きについては司法書士等の専門家へ依頼するのが一般的でした。

しかし、最近は不動産の相続登記についても相続人自身の方で済ませるケースが多くなりました。

その背景としては、法務局の職員が相続登記の手続きについて丁寧に教えてくれるようになったことや費用節減等の理由が挙げられます。

確かに、専門家に相続登記の手続きを依頼した場合の手数料は決して安いものではありませんので、これを節減できるのであれば、専門家ではなく自分たちで相続登記を済ませてしまおうと考える方が多いと思われます。

ただし、登記手続きについて専門家に依頼せず相続人たちだけで手続きを進めてしまったがために、後になってから問題が発生することもしばしばあります。

相続登記の手続の「落とし穴」

ほんの一例ではありますが、下記のような問題が起ることが考えられます。

  • 手続きに必要な戸籍が不足している
  • 不動産の記載に不備が存在する
  • 私道ないし私道の持分についての手続きが漏れている

以下、詳しく説明していきます。

手続きに必要な戸籍が不足している

相続登記の際に必要な書類の一つとして、相続人の戸籍や被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍があります。

相続登記の手続きを行うときになってはじめて戸籍に触れたという方も少なくありません。

戸籍の見方が分からない方が戸籍を収集すると、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍の一部が不足しているという事態が発生することもあります。

相続登記申請後に、法務局の担当者が提出書類を審査し、不備がなければ登記(名義変更)が実行されることになりますが、必要な戸籍が不足している場合には、その戸籍の提出を求められることになります。

もちろん、その戸籍の収集ができなければ相続登記の手続きをやり直すことになってしまいます。

なお、戸籍の問題は相続登記だけではありません。

相続人の一部でも欠けた遺産分割協議は法律上当然に無効となるため、このような場合には遺産分割協議をやり直すことになってしまいます。

そういう意味では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得するというのは、相続そのものに関わる非常に重要な作業の一つです。

また、不足していた戸籍を取得した結果、新たな相続人(例えば、被相続人とその前妻との間の子)の存在が明らかになったという事例も実際にあります。

そして、見つかった新たな相続人が当初の遺産分割協議案に同意しなければ、紛争へと発展してしまう可能性もあります。

不動産の記載に不備が存在する

法定相続分と異なる割合で不動産を相続する場合には、遺産分割協議書も必要となります。

相続登記の手続きを相続人自身で行う場合、遺産分割協議書についても相続人自身で作成することになりますが、遺産分割協議書上での不動産の記載に不備が存在することも少なくありません。

例えば、相続登記の際の不動産の特定方法としては、不動産登記簿に記載されている地番表記で特定を行うこととなりますが、専門家以外の方が遺産分割協議書を作成した場合、これを住居表示で特定してしまっている場合が少なくありません。

また、本籍地などの記載が誤っていることも少なくありません。

遺産分割協議書に不備がある場合には、その部分につき訂正をするため相続人全員の実印が必要となりますが、相続人の一部でもがその訂正に非協力的であれば、相続登記の手続きが完了しない事態となってしまいます。

私道ないし私道の持分についての手続きが漏れている

相続財産である不動産が戸建ての場合には、相続人の方で被相続人名義の私道(「公衆用道路」とも言います)ないし私道の持分が存在することが少なくありません。

この存在を知らなかったため、建物や本地(建物が建っている土地のこと)については相続登記が済んでいるものの、私道ないし私道の持分については被相続人名義のままということも考えられます。

一方で、相続財産である不動産がマンションや分譲団地等の集合住宅の場合には、被相続人名義の集会所やゴミ置場の共有持分が存在することも少なくありません。

これらの存在は権利証や名寄帳から明らかになるのが一般的ですが、これらの書類を見慣れていない方の場合には記載を見逃していることも考えられますので注意が必要となります。

相続登記手続は専門家に相談を

相続登記を専門家に頼むと、確かに費用が発生します。

しかし、相続登記についてはその費用を払っても十分にメリットがあります。

相続した不動産の売買にも影響が

相続した不動産を売却するような場合においては、相続登記が未了であるがゆえに、売却手続きが中断してしまうこともあります。

相続登記まで時間がかかる場合には、せっかく見つかった買い手の気が変わってしまい、売却の話が流れてしまうことも十分にあります。

司法書士に支払う相続登記の費用を渋ったがために、せっかくの売却が上手くいかなくなってしまっては元も子もありません。

重要な書類を専門家以外にあずける不安もある

また、相続人自身で相続登記を行う場合、相続人全員で法務局の窓口へ行くか、相続人の一部に書類(実印を押した書類や印鑑証明書)を任せて法務局の窓口へ登記申請を行うこととなります。

相続人の中には、たとえ身内であっても重要な書類を任せるのは心配だという方も少なくないと思います。

このような相続人がいる場合には、司法書士等の相続人にとって中立的な専門家へ依頼することによって、手続きが円滑に進む場合もあります。

相続登記は専門家に依頼を

多少の費用はかかってしまいますが、専門性の高い手続きについては専門家に任せて、迅速かつ確実に手続きを済ませてしまい、相続人たちは1日も早く日常生活に集中できる環境を整備することも重要なのではないでしょうか。

専門家へ手続きを依頼することの最大のメリットとしては、手間や時間をかけずに済むということに尽きます。

相続登記の依頼をきっかけに一度専門家と接点を作っておけば、今後発生する相続への対策について相談する相手も見つけることにもなります。

相続財産の中でもとりわけ重要な不動産を円滑に承継できるよう、一度専門家へご相談されることをおすすめします。

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