相続発生からの流れ(必要な手続き)について

弁護士 木谷 倫之 (きだに ともゆき)

被相続人が亡くなって相続が発生し役所への届出や葬儀が終わると、相続財産に関する手続きを行っていくことになります。

相続については必要書類の収集から各関係機関への届出に至るまで、実に様々な作業を行わなければなりません。

大まかな手続きの流れについては、以下のとおりになります。

  1. 相続財産の調査・確定
  2. 必要な手続きの特定、準確定申告等
  3. 遺産分割協議書の起案
  4. 各種名義変更の手続き・遺産の分配・相続税の申告

以下、それぞれの段階について詳しく説明します。

1. 相続人の調査・確定

相続が発生した場合には、単に関係窓口へ届出をしさえすればいいわけではありません。

まずは、被相続人が死亡した事実に加えて、法定相続人が誰なのかを確認できるための証明書(戸籍謄本など)を収集するところからはじめることになります。

被相続人や相続人の本籍地がバラバラである場合や相続関係が複雑な場合には、戸籍を収集するのも一苦労です。

この点については、別の章で詳しく解説していきます。

2. 相続財産の調査・確定

次に行うのが、相続財産の調査です。

相続財産としてどのようなものがあるのか、相続人がちゃんと把握できていないケースも珍しくありません。

相続人が思いもよらなかった財産や借金が出てくることもあります。

3. 必要な手続きの特定

相続財産の内容により、それぞれ違う手続が必要になります。

例えば、不動産については法務局への相続登記、預貯金については金融機関への預貯金の解約・払戻しの手続き、自動車であれば陸運局への手続きなどを行っていくこととなります。

そのほかにも色々な手続が考えられます。

以下、いくつかの例を挙げて説明します。

相続財産に多額の負債がある

遺産の中に価値のある財産があれば良いのですが、相続財産の中に多額の借金が存在する場合も考えられ、このような場合には、相続放棄などの手続きを検討することになります。

相続人の中に未成年者や認知症の人がいる

相続人の中に未成年者がいる場合には、家庭裁判所への特別代理人の選任申立ての手続きが必要となります。

また、相続人の中に認知症の人など意思能力に問題のある方がいる場合には、家庭裁判所への成年後見等の申立ての手続きが必要となります。

また、相続人の中に行方不明の方がいる場合には、不在者財産管理人選任申立ての手続きも必要となります。

相続した不動産が農地である

相続した土地が農地であった場合には、農業委員会への届出も必要となります。

被相続人が許認可事業を営んでいる会社の役員等の地位にあった場合には、所轄官庁への届出も必要となります。

被相続人に一定の収入があった

被相続人に一定の収入があったような場合には、相続発生から4か月以内に税務署へ準確定申告を行う必要があります。

4. 遺産分割協議書の起案

遺産の分配について相続人たちの中で協議がまとまれば、次はそれを「遺産分割協議書」という形にしていく作業が必要となります。

ここで重要なのは、遺産分割協議書に下記のような人・物・合意内容を明確に記載することです。

  • 被相続人(亡くなった人)が誰なのか
    (氏名・生年月日・最後の本籍地・最後の住所地等で特定)
  • どの相続財産についての合意なのか
    (不動産であれば登記簿上の記載で特定し、預貯金であれば金融機関名・支店・口座の種類・口座番号等で特定)
  • 相続人のうち誰がどの割合で取得するのか
    (相続人名・取得割合等で特定)

これらの情報の特定が不十分であると、相続に関する各種手続きの際に、担当窓口で遺産分割協議書を受理してもらえません。

その結果、遺産分割協議書を作り直し、各相続人の印鑑をもらい直すことにもなりかねません。

しかも、遺産分割協議書の作成に当たって、他の相続人が協議内容に不満があり渋々印鑑を押したような場合には応じてもらえないこともありえます。

他の相続人が印鑑の押し直しに協力してくれなければ、結果的に、裁判手続きに発展することにもなりかねません。

各種名義変更の手続き・遺産の分配・相続税の申告

相続人全員の間で遺産分割協議がまとまり遺産分割協議書への捺印が終われば必要書類をもって各窓口で手続きを行っていくことになります。

相続財産に不動産がある場合

不動産の場合には、管轄法務局の窓口へ相続登記を申請します。

相続登記申請の際には、登録免許税(不動産等の名義変更の際に必要となる税金)の納付が必要となります。

固定資産税評価額に1000分の4の税率を乗じた金額を収めることとなります。

相続財産に預貯金がある場合

金融機関の窓口では、戸籍・遺産分割協議書・印鑑証明書の他にも、相続届(金融機関によって名称は異なります)等の書類の提出を別途求められることがほとんどです。

金融機関での預貯金の解約・払戻時には、振込手数料が発生するのが通常のため、これらの負担が生じることについても留意しておかなければなりません。

相続財産が金融商品の場合

相続財産の中に株式や投資信託等の金融商品がある場合には、証券会社の窓口において、相続人名義で新たに口座を開設するのが通例です。

被相続人名義の口座から新たに開設した相続人名義の口座へ株式や投資信託等の金融商品を移管することにより相続財産を承継する流れになります。

もし、これらの金融商品を引き続き保有するのではなく、すぐに売却・換価したい場合にも、相続人名義の口座の開設を省略できない場合がほとんどのため、これらの手間が生じることはあらかじめ把握しておかなければなりません。

相続財産が自動車の場合

相続財産が自動車の場合には、陸運局の方へ出向き、自動車を取得する相続人への名義変更手続きを行うこととなります。

この際に自動車についての車庫証明も必要となりますので、注意が必要となります。

相続税の申告

一定の相続財産がある場合には、相続の発生から10か月以内に相続税の申告を行う必要があります。

この申告期限を延長することはできません。

納税資金の確保の意味でも、迅速に遺産分割協議を済ませて、相続税の申告・相続税の納付を終わらせたいところです。

しかし、上で説明したように各窓口によって必要書類も異なるため、手続きに慣れていない相続人だけで進めようとすれば、何度も窓口へ足を運ぶ羽目になってしまうこともあります。

手続きの漏れや不備を防ぐには専門家に相談するのが確実

相続手続きに当たっては、相続人や相続財産の調査だけでなく、必要な手続きを漏らさず特定することも重要となってきます。

また、公的機関への届出については届出期間が定められていることがほとんどです。

手続きに慣れていない相続人たちだけで進めようとする場合には必要な手続きを見落としがちなだけに、注意が必要です。

相続手続きでちゃんと通用する遺産分割協議書をしっかりと起案することもポイントとなります。

相続人の中には、普段押し慣れていない実印を押すことに抵抗がある方が多いのが実情です。

何度も印鑑をもらい直すことによって、相続人間で無用な紛争が起きることは回避したいものです。

これらのややこしい問題に発展しないよう、あらかじめ相続に精通した専門家にご相談されることをおすすめします。

相続人たちが安心して日常生活に戻れるために、相続に精通した専門家が最初から最後までサポートしてまいります。

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