相続人調査について

弁護士 木谷 倫之 (きだに ともゆき)

相続手続きを進めていく中で、ほとんどの方が、まず戸籍の収集からはじめられると思います。

これは、実際に相続手続きを行う場合に、実際の相続手続きにおける法定相続人が誰になるのかを証明するために必要となるからです。

相続人が配偶者や子供だけといったように、相続関係が単純な場合であれば、比較的容易に戸籍の収集ができてしまうことが多いですが、相続関係が複雑な場合には、それだけ集める戸籍の数も増えてしまい、相続人の負担も増えてしまうことになります。

今回はこの相続人調査について詳しく説明します。

相続人調査の方法:戸籍の取得

まずは、被相続人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍を集める必要があります。

これは、被相続人が死亡した事実を確認するという目的と法定相続人(配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹)が誰なのかを確認する目的があります。

次に、相続人の現在の戸籍を取得する必要があります。

これは、その相続人が現在生存していること、ないし、被相続人の死亡時に生存し相続権を有していることを確認するという目的があります。

※本籍地が遠方の場合:戸籍の郵送請求の方法について

なお、本籍地が遠方の場合であっても、郵送請求の方法により戸籍を取り寄せることが可能です。

遠方の本籍地の役所まで出向く必要はありません。

(仮に、本籍地がわからない場合には、本籍地付きの住民票を住所地の市区町村の窓口で取得すれば容易に調べることができます。)

まずは、本籍地を管轄する市区町村のホームページから郵送請求用の申請書をダウンロードし必要事項を記入します。

この申請書に、運転免許証や健康保険証などの公的な本人確認書類の写し、所定の金額の定額小為替(郵便局で購入できます)・返信用封筒を同封して、市区町村の担当窓口宛に発送することにより、戸籍を郵送で取り寄せることが可能となります。

(具体的な手続きについては、管轄の窓口へ確認するようにしましょう。)

具体的な相続人調査の方法

それでは以下、場合分けをして、具体的な調査方法を説明します。

配偶者が相続人となる場合

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。

被相続人と配偶者は同じ本籍にいるため、被相続人が死亡した際の戸籍(除籍謄本)を取得すれば、必然的に相続関係が証明されることとなります。

子が相続人となる場合

被相続人に子がいる場合には、子は配偶者とともに相続人となります。

子については、婚姻や自らを筆頭者とする戸籍を新たに作成した場合には、被相続人(親)の戸籍から除籍されています。

被相続人の(出生から死亡に至るまでの)戸籍の中に必ず子の本籍地の記載がされるため、この記載を頼りに現在の本籍地へとつながるように戸籍をたどっていくことになります。

なお、代襲相続が発生している場合には、代襲相続関係を確認できる戸籍も必要となります。

直系尊属が相続人となる場合

被相続人に子がいない場合には、被相続人の直系尊属(父母・祖父母等)が配偶者とともに法定相続人となります。

父母と祖父母の双方がいる場合には、親等が近い方(父母)が法定相続人となります。

父母の双方が亡くなっている場合には、祖父母が法定相続人となります。

通常、被相続人の出生時の戸籍の中に直系尊属(父母・祖父母等)の記載があるため、この記載を頼りに被相続人の直系尊属の現在の本籍地の戸籍を取り寄せることになります(なお、直系尊属については、代襲相続の制度はありません)。

兄弟姉妹が相続人となる場合

被相続人に子や直系尊属がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が配偶者とともに法定相続人となります。

被相続人の戸籍に記載されている各兄弟姉妹の記載を頼りに被相続人の兄弟姉妹の現在の本籍地の戸籍を取り寄せることになります。

兄弟姉妹の数が多い場合や婚姻により遠方の本籍地へ移っているような場合には、それだけ手間がかかってしまうことになります。

なお、代襲相続が発生している場合には、代襲相続関係を確認できる戸籍も必要となります。

【ワンポイント】「代襲相続」とは
被相続人よりも先に法定相続人が亡くなってしまっている場合に、その法定相続人の直系卑属(子や孫)が代わりに相続することとされています。

これを「代襲相続」といいます。

なお、兄弟姉妹が法定相続人となる場合の代襲相続については、代襲は一代限り(甥・姪のみが代襲相続人)となり、甥・姪が被相続人よりも先に亡くなっているような場合においては、甥・姪の直系卑属以下の代襲相続(「再代襲」ともいいます)は認められないこととなっています。

相続人調査に必要な戸籍書類

それでは以下、具体的な書類について説明します。

相続人が配偶者・子(又は代襲相続人)の場合

  • 被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (代襲相続人がいる場合)被代襲者の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員(配偶者・子)の(現在の)戸籍謄本

相続人が配偶者・直系尊属の場合

  • 被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (被相続人の直系卑属がおり、その直系卑属の全員が死亡している場合)その直系卑属全員の死亡の記載を確認できる戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (被相続人の直系尊属の中に死亡している方がいる場合)その直系卑属の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖父の場合では、父母)
  • 相続人全員(配偶者・直系尊属)の戸籍謄本

※直系尊属については、被相続人とのつながりを確認できる戸籍も必要。

相続人が配偶者・兄弟姉妹(又は代襲相続人)の場合

  • 被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (被相続人の直系卑属がおり、その直系卑属の全員が死亡している場合)その直系卑属全員の死亡の記載を確認できる戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属全員の死亡を確認できる(除籍・改製原戸籍)謄本
  • (代襲相続人がいる場合)被代襲者の出生から死亡に至るまでの記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員(配偶者・直系卑属又はその代襲相続人)の戸籍謄本

※兄弟姉妹については、被相続人とのつながりを確認できる戸籍も必要。

相続人の調査を専門家に任せるべきケースとは

戸籍には様々な記載事項があるため、戸籍を見慣れていない一般の方たちにとっては、どこをどう読めばいいのか、わからない方が多いと思います。

そもそも戸籍は、戸籍制度の変遷に伴って様式が変わるたびに、その都度新たな戸籍が編製されています。

他にも転籍(本籍地が変わること)があった場合には、別の本籍地へ新たに戸籍が編製されています。

このように、戸籍の確認自体が、専門家でない限り非常に難しくなっているのです。

特に問題となる、専門家に任せた方がいいケースをみていきましょう。

兄弟姉妹が法定相続人となる場合

兄弟姉妹が法定相続人となる事例において、被相続人とその兄弟姉妹とが同じ戸籍の中にいない場合には、原則として、被相続人の戸籍を法定相続人である兄弟姉妹の方が取得することはできません。

この場合、役所の窓口において、被相続人と相続人とが兄弟姉妹であることを証明(同じ両親であることを過去の戸籍を用いて証明)し、相続手続きで使用する必要があることを説明しなければなりません(郵送請求の場合には戸籍の写しなどを役所の窓口へ郵送することとなります)。

上記と同じ趣旨で、共同相続人となる他の兄弟姉妹の戸籍についても、過去の戸籍や被相続人の死亡の戸籍を用いて、相続関係の証明を行うことで戸籍を取り寄せることが可能となります。

戸籍を見慣れていない一般の方たちにとって、これらの証明を行うことは中々骨の折れる作業となります。

相続人の中に外国籍の方がいる場合や海外在住の方がいる場合

相続人の中に外国籍の方がいる場合や海外在住の方がいる場合には、国内のみならず海外からも書類を取り寄せる必要がありますので、書類の収集が難航します。

そもそも、日本の戸籍制度のような証明制度も有している国はほとんどないのが現状です。

したがって外国籍の方が相続人となる場合には、その方の身分関係を証明するのが困難であることも少なくなく、ひいては相続関係を証明することが困難となってしまいます。

(外国における身分関係の証明制度を調べるところからはじめなくてはならず、相続人にとってかなりの負担になります。)

相続人調査は非常に困難

そもそも戸籍に詳しくない一般の方が戸籍等の書類を収集した場合、戸籍などの相続関係証明書類の収集が不十分であることも起こり得ます。

この場合、窓口での相続手続きを受け付けてもらえません。

更に、一部の戸籍が不足していたような場合、不足している戸籍を取り寄せた結果、自分たちが把握している他にも法定相続人がいることが判明する場合もあります。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人の一人でも欠いた状態で行った遺産分割協議は法律上無効となってしまうため、このような場合には、手続きが振り出しに戻ってしまう(遺産分割協議のやり直し)ことになります。

そのほかにも相続関係が複雑な場合には、相続人の調査の段階から手続きが難航することが予想されます。

一部の相続人だけで何とか戸籍をはじめとする相続証明書類を集めようとする場合が多いものの、結局頓挫してしまうことがほとんどです。

相続手続きをなるべく早く解決させるためにも、早い段階から専門家へ手続きを任せることをおすすめします。

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