遺産分割で必要な不動産の評価方法とは
相続が開始されると、相続人の誰がどの遺産を引き継ぐかを決める遺産分割協議を行う必要があります。
現金や預金などはその価値が一目で分かりますが、不動産の場合は価値を評価する必要があります。
ここでは、遺産分割で必要な不動産の評価方法について解説します。
遺産分割で必要な不動産の評価は1つではない
不動産の評価と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。
毎年ニュースなどで聞く公示価格や相続の際に聞く路線価など、人によってさまざまでしょう。
実は、不動産の評価方法には複数の方法があり、どの評価方法を基に遺産分割を考えるかは相続人間で話し合って決めることになります。
しかし、評価方法がいくつもあるということは、当然ながらどの評価方法を採用するかで不動産の評価額自体も異なります。
例えば、この方法なら5,000万円だけど、別の方法では4,000万円というような金額の開きがでることもあります。
そのため、評価方法をよく確かめずに相続人間で土地の評価額に安易に合意してしまうと、自分にとって不利益な内容で合意してしまっていたということにもなりかねません。
遺産分割で不利にならないためにも、どのような評価方法があるのかを知っておくことをおすすめします。
それでは以下、評価方法についてそれぞれ解説します。
地価公示価格
「地価公示価格」とは、地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回3月に公表する価格です。
1月1日を基準日とした特定(都市計画法による都市計画区域内の住宅地や商業地など)の標準地の価格で、不動産鑑定士の評価結果などを基に決められます。
一般の土地取引価格に対する指標となることなどを目的に公表されているため、新聞やニュース
などでも大きく報じられます。
地価公示価格と似たものに、都道府県知事が公表する地価調査標準価格があります。
これは、地価公示価格と異なり、都市部以外の土地も対象に入れて、適正な土地価格の形成に寄与しています。
地価公示価格は、透明性が高いというメリットもありますが、全ての土地について公示価格が公示されるわけではないといったデメリットもあります。
実勢価格(時価)
「実勢価格」とは、不動産の時価のことです。
つまり、実際の取引が成立する価格のことです。
では、時価はどうやって決めるかというと、同じような大きさや用途などの不動産が周辺地域においていくらで取引されたのかという取引事例や、公的データを参考にします。
不動産業者の広告に載っているものは、あくまで売却者の売却希望価格なので、実勢価格と異なる場合があります。
地価公示価格や実勢価格は、国土交通省のホームページにある「土地総合情報システム」で調べることができます。
固定資産税評価額
「固定資産税評価額」とは、市町村が固定資産税などの税金を計算することを目的に定めている価格です。
概ね公示価格の70%程度の金額になっています。
固定資産税評価額は不動産ごとに決まっており、その価格は市区町村に置いてある「固定資産課税台帳」に記載されています。
また、毎年、各自治体から納付書と一緒に送られてくる固定資産税課税明細書にも記載されているので、簡単に金額を把握することができます。
固定資産税評価額は3年に1度、評価替えします。
つまり評価替えしてから3年間は同じ価格です。
そのため、最新の時価を反映していないこともあります。
路線価(相続税評価額)
「路線価」とは、相続税および贈与税の算定基準となる土地の評価額で、毎年7月に国から公表されます。
路線価は道路ごとに設定されており、その道路に面する1㎡あたりの土地の価額を表しています。
また、公示価格の80%になるように設定されているといわれています。
路線価は、国税庁のホームページ上の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」に掲載されています。
このように、1つの土地に対して、上記の「地価公示価格」「実勢価格」「固定資産税評価額」「路線価」の4つの違う価格が存在する状況を「一物四価(いちぶつよんか)」とよびます。
不動産業者の査定額、不動産鑑定士による鑑定額
ここまでは、公的に公表されている評価額についてみてきました。
しかし、不動産の評価額には、官公庁ではない私人による評価額もあります。
それが、不動産業者の査定額や不動産鑑定士による鑑定額です。
「不動産業者の査定額」とは、不動産業者に不動産の市場価格を査定してもらった価格を指します。
不動産の売却を希望している人が、売却額の目安を知るためによく使う方法です。
ただし、不動産業者によって査定価格が異なる場合も多くあります。
「不動産鑑定士による鑑定額」とは、公的な資格をもつ不動産鑑定士に不動産の価値の鑑定を依頼し、評価額を出してもらったものです。
この鑑定額も、不動産鑑定士によって異なることがあります。
安易な合意の前に専門家に相談しよう
このように、不動産の評価額には様々な方法があります。
立場によって遺産分割に有利になる評価額、そうでない評価額があります。
自分にとって不利にならないためにも、遺産分割で安易に評価額の合意をすることは避けましょう。
不明点などがあれば、速やかに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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