相続財産の中に不動産がある場合の分割方法
相続が開始されると、相続人の間で遺産を分割します。
遺産には現金や預金だけでなく、自宅などの不動産があるケースも少なくありません。
現金や預金であれば簡単に分けられますが、不動産だとそういう訳にはいきません。
では不動産はどのように分割すればよいのでしょうか。
ここでは、相続財産の中に不動産がある場合の分割方法について解説します。
不動産の4つの分割方法
不動産の遺産分割方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有」の4つがあります。
それぞれどのようなものか、みていきましょう。
現物分割とは
「現物分割」とは、遺産そのものを分割する方法のことで、裁判実務上では、遺産分割の原則的方法だと考えられています(最三小判昭和30年5月31日民集9巻6号793頁)。
例えば、相続財産が不動産3,000万円、現金・預金2,000万円、遺産合計5,000万円で、相続人は兄と弟の2人だったとします。
この場合、①兄は不動産3,000万円、弟は現金・預金2,000万、というように、遺産の種類ごとに譲り受ける人を決めて分割することもできますし、また、②兄・弟で不動産所有権を2分の1ずつの持ち分で分割し、現金・預金を各1,000万円ずつ、というように遺産すべてについてそれぞれの持ち分で分割してしまうということもできます。
ポイントは、遺産以外から金銭を準備したり、遺産を換価する等の必要がなく、残された遺産だけをうまく使って分割することができるという点です。
なお、土地所有権の現物分割をする場合は、マストの要件ではありませんが、将来の処分可能性や公租公課の負担等を踏まえると、分筆登記をしておくべきでしょう。
代償分割とは
代償分割は、不動産を相続人の1人が単独で引き継ぎつつ、その代わりに代償金を他の相続人に支払わせることで、遺産分割で受け取る金銭的価値を平等にしようという分割方法です。
先ほどと同じ具体例でみてみましょう。
相続財産が不動産3,000万円、現金・預金2,000万円、遺産合計5,000万円。
相続人は兄と弟の2人。
兄は不動産3,000万円、弟は現金・預金2,000万を相続。
この場合、遺産を平等に分けるなら、1人あたり遺産合計5,000万円×1/2=2,500万円になります。
ということは、平等に分けるよりも兄が500万円多く、弟が500万円少なく相続しています。
そこで、兄から弟に500万円の金銭を支払うことで、不動産を相続人の1人が単独で引き継ぎつつ、遺産分割を平等に行うことができます。
これが代償分割です。
代償分割は、不動産を引き継いだ側に金銭の支払い能力がなければ成り立たないというデメリットがあります。
換価分割とは
「換価分割」とは、相続した不動産を売却によって現金化し、その金銭を相続人で公平に分割する方法です。
では、これまでと同様に具体例で見てみましょう。
相続財産が不動産3,000万円、現金・預金2,000万円(遺産合計5,000万円)
相続人は兄と弟の2人
この場合、不動産を3,000万円で売却すると、売却代金3,000万円+元からあった現金・預金2,000万円=5,000万円の現金・預金が手元に残ります。
その現金・預金を兄と弟で2,500万円ずつ平等に分割します。
換価分割の場合、遺産分割で受け取る金額が平等になるため、相続人の間でもめることはありません。
ただし、不動産がすぐに売却できる保障はないため、売却が長引くと遺産分割も長引いてしまうデメリットがあります。
不動産の共有
不動産は必ずしも1人でしか所有できないわけではありません。
実は、複数人の共有名義で不動産を所有することも可能です。
そこで、遺産分割においても、相続人のうちの誰か1人で不動産を引き継ぐのではなく、複数の相続人で不動産を引き継ぎます。
この場合、遺産分割のために不動産を売却する必要がないというメリットがあります。
ただし、後に不動産の売却をする際には、共有者全員の同意が必要であったり、次の相続の際に複雑になったりするなどのデメリットもあります。
相続財産の中に不動産があったら、専門家に相談しよう
みてきたように、不動産の遺産分割については、様々な方法があります。
相続人にとってどの方法が最良でトラブルにならないのかをあらかじめよく考え、遺産分割を行う必要があります。
しかし、不動産の遺産分割には専門知識が必要なことも多いため、1人で考えるのには限界があります。
トラブルにならないためにも、遺産分割が決まる前、しかもできるだけ早く弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
当事務所では、経験豊富な税理士、弁護士、司法書士がワンストップであなたを全力でサポートします。
遺産分割や不動産の評価額のことだけでなく、相続税や相続人間のトラブル、登記のことなど、相続でお困りのことがありましたら、何でもお話しください。
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